「なぜなぜ分析を始めたものの、途中から次の『なぜ?』が出てこない」
「考えても同じような原因ばかり出てきて、結局『作業者の確認不足』で終わってしまう」
製造現場で不具合やトラブルの原因を調べていると、こんな場面はないでしょうか。
なぜなぜ分析は、起きた問題に対して「なぜ?」を繰り返し、原因を掘り下げていく方法です。
やり方だけを見るとシンプルですが、実際にやってみるとなかなか思うようには進みません。
私も製造業で働く中で、不具合やトラブルが起きた際になぜなぜ分析をすることがあります。
最初の「なぜ?」は比較的簡単に出てきても、2回、3回と掘り下げていくうちに、
「ここから先は何を考えればいいんだ?」
と手が止まってしまうことがあります。
そんなときに無理やり「なぜ?」を繰り返してしまうと、「確認不足だった」「注意が足りなかった」といった曖昧な原因にたどり着きがちです。
しかし、それでは具体的な再発防止策につながりません。
私が大切だと感じているのは、なぜなぜ分析が進まなくなったときほど、無理に「なぜ?」を続けないことです。
この記事では、なぜなぜ分析が途中で止まってしまう原因と、行き詰まったときに私がどのように考えているのかを、製造現場での経験をもとに紹介します。
目次
なぜなぜ分析が途中で止まってしまう原因
なぜなぜ分析が進まなくなる原因の一つは、「なぜ?」に対する答えが抽象的になってしまうことだと感じています。
たとえば、製品の不具合が発生したとします。
「なぜ不具合が発生したのか?」
↓
「作業者の確認が不足していたから」
↓
「なぜ確認が不足したのか?」
↓
「注意が足りなかったから」
ここまで来ると、その次の「なぜ?」が難しくなります。
「なぜ注意が足りなかったのか?」と考えても、「忙しかった」「意識が低かった」など、さらに曖昧な答えになってしまうこともあります。
これでは原因を深掘りしているように見えて、実際には同じようなところをぐるぐる回っているだけです。
また、最初から原因を決めつけてしまうことにも注意が必要です。
「これは作業者のミスだろう」
「手順を守らなかったのが原因だろう」
こう考えた状態でなぜなぜ分析を始めると、その結論に合う理由ばかりを探してしまいます。
本当は設備や作業方法、材料、教育など別のところに原因があるかもしれません。
もう一つ気をつけたいのが、「なぜを5回繰り返さなければならない」と考えすぎることです。
大切なのは5回という回数ではなく、再発防止につながる原因までたどり着くことです。
3回で十分な場合もあれば、一つの原因だけでは説明できない場合もあります。
それでも「あと2回なぜを考えなければ」と無理に続けると、事実ではなく推測で原因を作ってしまう可能性があります。
なぜなぜ分析が途中で止まったときは、考える力が足りないとは限りません。
むしろ、「これ以上掘り下げるための情報が足りていない」サインかもしれないのです。
なぜなぜ分析が進まないときは「なぜ?」を一度やめる
なぜなぜ分析をしていて、次の「なぜ?」が出てこなくなったとき、私は無理に原因をひねり出さないようにしています。
そんなときは一度「なぜ?」から離れて、起きた事実をもう一度確認します。
たとえば、
-
いつ発生したのか
-
どの工程で発生したのか
-
そのとき何をしていたのか
-
本来はどうなるはずだったのか
-
正常なときと何が違ったのか
-
いつもと違う作業や条件はなかったか
といったことです。
一見すると、なぜなぜ分析を中断して最初に戻っているように感じるかもしれません。
しかし、実際にはこの確認が重要です。
たとえば「作業者が確認しなかった」というところで分析が止まったとします。
そこで「なぜ確認しなかったのか?」を無理に考えるのではなく、実際の作業を確認してみます。
すると、
「確認する項目が多かった」
「手順書では確認するタイミングが分かりにくかった」
「通常とは違う作業が途中に入っていた」
など、新しい事実が見つかることがあります。
ここまで分かれば、もう一度「なぜ?」を考えられるようになります。
私自身、なぜなぜ分析が進まないと「もっと深く考えないといけない」と思ってしまうことがあります。
しかし、考えても答えが出ないのは、単純に判断するための情報が足りていないだけかもしれません。
机の上で原因を考え続けるより、現場を確認したり、実際に作業した人に話を聞いたりした方が早く進むこともあります。
なぜなぜ分析で手が止まったら、「次のなぜは何だろう?」ではなく、**「まだ確認できていない事実はないだろうか?」**と考えてみる。
私はこの切り替えが大切だと感じています。
「人」だけで考えず、視点を横に広げる
もう一つ意識したいのが、原因を「人」だけに絞らないことです。
製造現場のトラブルでは、
「作業者が確認しなかった」
「手順を守らなかった」
「作業者が間違えた」
といったところに目が向きやすいと思います。
もちろん、実際に作業ミスが原因になっていることもあります。
ただ、そこで終わらせずに、「なぜ、そのミスが起きる状況になっていたのか」まで視点を広げることが重要です。
たとえば「作業者が確認しなかった」という事実があったとしても、
「確認方法は分かりやすかったか」
「手順書に確認項目が明記されていたか」
「設備の構造上、確認しにくくなっていなかったか」
「作業量や作業環境に問題はなかったか」
「教育は十分だったか」
など、見る方向を変えると確認すべきことが増えてきます。
私は行き詰まったとき、人・設備・方法・材料・環境など、別の方向から見られないかを考えるようにしています。
大切なのは、「作業者のミスを原因にしてはいけない」ということではありません。
実際に人のミスが直接的な原因になっている場合もあります。
ただ、「注意する」「気をつける」といった対策だけでは、同じ状況になったときに再発する可能性があります。
設備や仕組み、手順まで視点を広げれば、
「間違えても次の工程で気づけるようにする」
「そもそも間違えにくい作業方法にする」
といった対策も考えられます。
人を責めるためではなく、同じことが起きにくい仕組みにするために原因を探す。
この視点を持つと、なぜなぜ分析が途中で行き詰まったときにも、次に確認すべきことが見つけやすくなります。
原因が複数ありそうなら「一本道」にしない
なぜなぜ分析をするとき、
「問題が起きた」
↓
「原因A」
↓
「原因B」
↓
「真因」
というように、一つの原因をどんどん掘り下げていくイメージを持っている人も多いと思います。
しかし、実際の製造現場では、一つの原因だけでトラブルが起きているとは限りません。
たとえば、ある作業で部品の取り付け間違いが発生したとします。
調べてみると、
「作業者が部品を取り違えた」
という事実だけでなく、
「似た部品が近くに置かれていた」
「作業手順書では違いが分かりにくかった」
「取り付け後に間違いを確認する仕組みがなかった」
など、複数の要因が見つかるかもしれません。
この場合、一つだけを選んで「なぜ?」を続けるより、それぞれを枝分かれさせて確認した方が原因を整理しやすくなります。
「なぜなぜ分析だから、一本につなげなければならない」と考える必要はありません。
むしろ無理に一本道にしようとすると、本来確認すべき原因を途中で切り捨ててしまう可能性があります。
私も、原因がいくつか考えられる場合は、最初から一つに決めるのではなく、一度候補を広げてから事実を確認するようにしています。
その中で、実際にトラブルにつながったものは何か、それぞれの要因がどのように関係していたのかを整理していきます。
なぜなぜ分析で行き詰まったときは、「正解となる一本の原因を探さなければ」と考えすぎないことも大切です。
原因が複数あるなら、無理に一つにまとめず、それぞれを追ってみる。
それだけでも分析を進めやすくなることがあります。
なぜなぜ分析で私が気をつけていること
私がなぜなぜ分析をするときに特に気をつけているのは、早く原因を決めて分析を終わらせようとしないことです。
製造現場で不具合やトラブルが発生すると、原因の調査だけをしていればいいわけではありません。
状況の確認、関係者への聞き取り、対策の検討、報告資料の作成など、その後にもやることがあります。
管理職としては早く状況を整理して報告したいので、「おそらくこれが原因だろう」と先に進めたくなることもあります。
しかし、原因がズレていれば、その後に考える対策もズレてしまいます。
そのため私は、**「これは事実なのか、それとも自分の推測なのか」**を意識するようにしています。
また、実際に作業していた人の話を聞くことも大切にしています。
管理する側から見ると「なぜ確認しなかったのだろう」と思うことでも、作業者に聞いてみると、
「この表示では判断できなかった」
「普段とは違う手順になっていた」
「ここで確認するとは認識していなかった」
など、自分では気づかなかった情報が出てくることがあります。
もう一つ気をつけているのが、対策から逆算して原因を決めないことです。
「教育を実施する」という対策にしたいから「教育不足」を原因にするのではなく、まず何が起きていたのかを確認し、その原因に合った対策を考える順番が大切です。
なぜなぜ分析は、きれいな分析表を完成させることが目的ではありません。
同じ不具合やトラブルを繰り返さないために、どこを変えればいいのかを見つけることが目的です。
私は分析に迷ったときほど、この目的に戻って考えるようにしています。
不具合発生後の報告書や手順書作成については、「品質不具合対応でChatGPTが意外と役立った話」でも実体験を紹介しています。
どうしても進まないときはChatGPTに「答え」ではなく「視点」を出してもらう
ここまで紹介した方法を試しても、「他に何を確認すればいいのか分からない」と行き詰まることがあります。
そんなとき、私はChatGPTを使って自分では気づかなかった視点を出してもらうことがあります。
たとえば、次のように聞きます。
「製造現場で〇〇という不具合が発生しました。なぜなぜ分析をしていますが、『〇〇』から先の原因が思いつきません。考えるべき視点を複数挙げてください。」
すると、設備、作業方法、教育、材料、作業環境など、自分だけで考えていたときには出てこなかった視点を挙げてくれることがあります。
ここで大切なのは、ChatGPTが出した原因をそのまま真因にしないことです。
ChatGPTは実際の現場を見ているわけではありません。入力した情報から「こういう可能性も考えられる」と候補を出しているだけです。
そのため、
「確かにこの可能性はありそうだ」
↓
「では、実際の現場ではどうだったのか確認してみよう」
という使い方をします。
原因をChatGPTに決めてもらうのではなく、自分の考えに抜けがないか確認するための補助役として使うイメージです。
一人で考えていると、どうしても同じ方向から原因を探してしまいます。そんなときに別の視点を出してもらえるのは、なぜなぜ分析を進めるうえで役立つと感じています。
ただし、会社の機密情報や個人情報などをそのまま入力しないことにも注意が必要です。必要に応じて内容を伏せたり、一般的な表現に置き換えたりしながら活用してください。
実際にChatGPTを使ってなぜなぜ分析を進める方法や、私が使っているプロンプトについては「なぜなぜ分析が進まない…ChatGPTを壁打ち相手にしたら原因分析が楽になった話」で詳しく紹介しています。
まとめ|止まったら「なぜ」を増やすより視点を増やす
なぜなぜ分析をしていて途中で止まると、「もっと深く考えなければ」「あと何回かなぜを繰り返さなければ」と思ってしまいがちです。
しかし、無理に「なぜ?」を続けても、事実から離れた原因を作ってしまうことがあります。
そんなときは、一度立ち止まって現場の事実を確認したり、人だけではなく設備や方法などに目を向けたり、複数の原因に枝分かれさせたりしてみる。
自分だけでは視点が広がらなければ、ChatGPTに原因の候補ではなく「確認すべき視点」を出してもらう方法もあります。
私自身、なぜなぜ分析で大切なのは、きれいに「なぜ」を5回並べることではないと思っています。
目的は分析表を完成させることではなく、不具合やトラブルの原因を見つけ、同じことが起きにくい状態にすることです。
なぜなぜ分析が進まなくなったら、「次のなぜは何だろう?」だけで考え続けるのではなく、「他に見るべきところはないだろうか?」と視点を変えてみる。
それだけで、止まっていた分析が動き出すことがあります。
トラブル報告書そのものの基本構成については「製造業のトラブル報告書の書き方」で詳しく解説しています。


